ぜんまいざむらい

いつか自由に。

狂人は誰?

 

 

私が狂ってるのか。

私以外が狂ってるのか。

 

幼い頃に比べると周りの本当の意思が汲み取れなくなってきた。

 

なんだか薄い膜で覆われているような。

だれもが本音でしゃべってないような。

世界が歪んでいるような。

 

歳をとるごとにみんな嘘が上手くなる。

 

だからこそコミュニケーションもうまくまわるんだろうけど、そこに狂気をかんじてしまう。

 

学生の時は年齢が同じくらいの集まりだから嘘のレベルもたかが知れてた。わたしは察知が上手いほうだったし、嘘の裏にある本心を安易に読み取れた。言葉は聞いていなくても表情や声で判断できるからちゃんと話しを聞いてなくてもだいたいの人とは上手くいった。

 

だけど今は違う。

 

社会に出れば色んな年齢の人がいるし、年取るほど嘘がうまい。田舎から上京してきた人も嘘がうまい。それに、仕事ができる人ほど嘘がうまい。

 

 

今まで簡単に見えていたコミュニケーションの糸のほつれが、結び目が、全然見えない。

 

 

友達同士の糸が切れてしまいそうなたびにこっそり結びなおしていたのに、もうそんなことできっこない。

 

糸は複雑で絡まっていてほつれなんて検討もつかないし、もはや最初から結ばれていなかったのかもしれないし、だれもが糸を見せたがらない。

 

 

そんな蜘蛛の巣みたいに広がった糸に絡まって、もがけばもがくほど息ができなくなって、わたしの中の白い部分にゆっくりと毒が侵食していく。

 

その毒はわたしから白くて綺麗なものを奪っていく。

 

環境を変えてもどこにでもある毒。

蜘蛛の巣に触れないようにそろりそろりと歩くのに、絶対につかまってしまう。

 

 

世の中で正常と言われている人には多分この糸が見えない。

 

大人になるにつれて鈍く強く目をつぶれるようになって糸が絡まってもずんずん進んでく。

 

蜘蛛の糸なんて気にしなければどんどん引きちぎれる。

 

そのせいで蜘蛛が死んだとしても。

自分の白い部分が死んだとしても。

 

 

それは正常といえるのか?

 

蜘蛛の糸を引きちぎるのを拒んだり、白い部分を守ろうとしている人達を狂人と呼ぶことがある。

 

それは本当に狂っているのか?

 

 

だれも正解は分からないしおそらく正解なんてない。

あるのは鈍くなれた多数派がつくる常識という枠だけだ。

 

 

ただ自分の白い部分を守ろうとしただけで、こうなってしまうとは思わなかった。

 

 

狂人は誰だ。

 

 

 

 

 

 

おしまい